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ESG課題が企業戦略に与える影響と情報開示までの具体的なステップとは?

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ESG課題とその取り組みについては、投資家が企業の中長期的な価値を判断するために重視する動きがあります。そのため、自社の戦略に関するESG課題を特定してそれに取り組み、ESG情報を開示することが必要となってきています。今回は、ESG課題が企業戦略に与える影響情報開示の必要性ESG情報開示に向けたステップについて、詳しく解説します。

ESG課題が企業戦略に与える影響と開示の必要性

昨今、企業価値を判断するために、ESG要素を含んだサステナビリティへの取り組み状況を重要視する動きが広まっています。そのため企業各社が抱えているESGの課題が、今後の企業戦略に影響を及ぼす可能性があり、適切なESG情報の開示が求められているのです。

ESG課題が企業戦略に与える影響

ESG課題が企業のビジネスモデルや戦略に与える影響には、大きく分けて2つあります。一つは、新たに規制がかかって商品やサービスが提供できなくなるというような「リスク」の発生です。もう一つは、新しい技術開発などによる新市場の開拓といった「機会」の発生です。そのため、ESG課題の検討において、リスクと機会を念頭に自社に及ぶ影響を分析する必要性が出てきます。

例えば、大手エネルギー会社は低酸素社会への移行をビジネスチャンスと捉えて企業戦略を立て、自社のエネルギーから炭素の100%除去を目標とし、太陽光や風力エネルギーに大きな投資をしています。これは、ESG課題を事業・資産ポートフォリオと機会として関連させた一例です。

製品・サービスとの関係においては、ある自動車メーカーは環境問題に対応することで企業の長期的安定を保証することとし、新車のCO₂排出削減と、ハイブリッド車や電気自動車の販売台数を大幅に増加させる計画を立てています。

企業がそれぞれESG課題を検討した上、自社に見合った戦略を立てることで、長期的な成長と企業価値の創造を目指すことができるのです。

ESG課題の関連情報開示の重要性

企業が重点的に取り組むESG課題について、企業戦略の中で対策を講じているという情報を開示することはとても重要です。ESG情報を開示することで、投資家を含めたステークホルダーに説明責任を果たすと同時に、投資家がその企業の価値を判断する材料とすることができるのです。

ESG課題への取り組みに対して、投資家が財務的なメリットを考慮できる内容を開示するのが望ましいですが、定性的であっても企業の価値と結びつくような情報について開示することがより重要とされています。

ESG情報開示に向けて【ステップ1: マテリアリティの特定】

ESG情報を開示するためには、各ガイドラインを参考とした上しっかりと手順を踏んで進めていく必要があります。まずは、企業における「マテリアリティの特定」をしていきましょう。

マテリアリティとは

「マテリアリティ」とは英語で「重要性」などを意味し、財務情報開示の用語としても使用されています。ESG投資における「マテリアリティ」とは、企業の価値に影響を及ぼす重要なESG課題のことを指します。

企業のESG課題であるマテリアリティを特定するプロセスについては、「マテリアリティ分析」と呼ばれています。企業価値に深く関係するESG課題をリストアップし、それら課題に焦点を定めて取り組みを進める必要があるのです。

国内のある金融企業は急激に変化する社会環境を踏まえ、中長期的な視点で自社が解決に貢献できる4つの社会的課題を特定しました。その4つの課題から重点課題を特定し、基盤取組を決定、企業戦略の中に組み込んでいるのです。

国内のある医薬品メーカーは、企業価値を最大化するために、長期投資家の利益となる関心事を特定した上、優先的に取り組むこととしました。特定した課題に優先順位をつけ、マテリアリティ・マトリクスを作成、その進捗状況を適宜開示しています。

マテリアリティを決定する上での評価基準

マテリアリティに関する企業の事例を見ると、幅広くESG課題をリストアップした後、その重要度を評価しているところがたくさんあります。そのためリスト作成の後、企業の価値との関連を考慮しながら、マテリアリティを特定する必要があるのです。

マテリアリティを決定するための評価基準には、いくつかポイントがあります。リストアップしたESG項目の重要度を評価する「評価軸の設定」、自社及びステークホルダーそれぞれの重要度による「評価方法の検討」、課題の内容による「時間軸」の設定、経営陣や取締役会の関与も含めた「重要度の決定」などが挙げられます。

ESG情報開示に向けて【ステップ2: 重要な指標の設定】

ESG情報を開示するためには、既存のスタンダードやガイダンスなどから、ESG課題への取り組みの指標を設定することが大切です。ここでは、既存のスタンダードやガイダンスを設定している「SASB」「GRI」「WFE」について紹介します。

ESG課題に対する取り組みの指標であるSASB, GRI, WFEとは?

「SASB」とは、2011年にアメリカのサンフランシスコを拠点にして設立された非営利団体「サステナビリティ会計基準審議会」の略称です。SASBは企業の情報開示について、将来的に財務インパクトが高いとされるESG要素に関して開示基準を設定しています。2018年11月に「SASBスタンダード」を作成、公表しています。

「GRI」とは、1997年にアメリカの非営利組織セリーズや国連環境計画(UNEP)を中心に設立された「グローバル・レポーティング・イニシアティブ」の略称です。政府や民間企業、その他組織のサステナビリティ報告書に関する理解の促進と書類作成の支援を目的に設立され、現在オランダのアムステルダムを本拠地としています。2000年に「GRIガイドライン」を公表、サステナビリティ報告書の普及が進んだ2016年に「GRIスタンダード」を公表しています。

GRI

「WFE」とは1961年に発足した「世界取引連合」の略称で、世界の主要取引所が加盟する国際的な業界団体のことです。現在、日本取引所グループも含め、取引所や清算決定機関を中心に約250組織が加盟し、2019年から日本取引所グループのCEOが理事に就任しています。2015年に「WFE ESG Guidance and Metrics」を作成、公表し、2018年にガイダンス、指標を改定しています。

WFE

最も影響力が高いと考えられる指標であるWFEのESG指標とは?

「WFE」は世界の株式指標のデータベースを保有し、毎月主要取引所の時価総額や取引高などに関する統計を公表しています。そのため、WFEが公表するESGの指標は、最も影響力があると考えられています。

環境関連については「温室効果ガス排出量」「エネルギー使用量」「環境リスク管理体制」など、10の指標を紹介しています。

社会関連では「男女の報酬差」「反差別」「人権」などといった10の指標を例示しています。

ガバナンス関連では「取締役会の独立性」「報酬とサステナビリティの紐付け」「サステナビリティ報告」「サステナビリティ関連開示」など10の指標を示しています。

これらの指標を基にESG課題への取り組み目標を設定すれば、世界的に企業評価を高めることが可能となるでしょう。

まとめ

現在、企業のESG課題は企業の戦略やビジネスモデルに大きな影響を及ぼしています。企業の理念や戦略に沿ったマテリアリティを特定し、その取り組みや情報開示によって企業価値を高めることができるのです。今一度、自社のESG課題をしっかりと分析し、適切に情報開示をしていきましょう。

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