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Scope2のロケーション基準とマーケット基準の特徴と算定方法

scope 2 market

ロケーション基準手法とは

概要

まず初めに、GHGプロトコルによるScope2の算定方法は
GHG排出量(tCO₂e)= 活動量【電力消費量】(MWh)*排出係数(tCO₂e/MWh)
となります。

以上の「排出係数」の報告手法として「ロケーション基準手法」と「マーケット基準手法」が存在し、基本的に両方の基準に基づき報告する必要があります。しかし、電力事業者との契約手法が利用可能な市場でなければ、ロケーション基準手法のみに基づいて報告する場合もあります。

ロケーション基準手法とはScope2排出量を地域・国などの特定区域内で発電に伴う平均の排出係数に基づきScope2排出量を算定する手法です。
日本の場合は、全国平均係数を使用しており、「代替値」として表わされています。

環境省・経済産業省が公表している平成30年度「電気事業者別排出係数(特定排出者の温室効果ガス排出量算定用)」の代替値は「0.000488」です。

また、ロケーション基準手法では再エネ電力等、低炭素電力メニューを調達していてもその効果は反映することはできません。

画像:温対法における全国平均係数

出典:国際的な気候変動イニシアティブへの対応に関する ガイダンス(経済産業省・環境省)

算定例

A電力から100MWh、B電力から300MWh、C電力から500MWh の電気をそれぞれ調達しており、温対法における全国平均係数が 0.50t-CO2/MWh の場合、算定結果は下記のとおりです。

  •  A 電力:100 MWh*0.50 t‐ CO2/ MWh = 50t‐ CO2 
  • B 電力:300 MWh*0.50 t‐ CO2/ MWh = 150t‐ CO2
  •  C 電力:500 MWh*0.50 t‐ CO2/ MWh = 250t‐ CO2

 以上を合計して排出量は 450t-CO2 と算出します。

マーケット基準手法とは

概要

マーケット基準手法とは報告する企業が、電源構成を指定して電力を購入している契約内容を反映した排出係数に基づき、Scope2排出量を算定する手法です。また、再エネ電力等、低炭素電力メニューを調達していれば、その効果を反映させることができます。

その契約の例として、グリーン電力証書、グリーン電力料金(メニュー別)、PPA(電力購入契約)などが挙げられます。

以上から、他者(電気事業者)から調達した電気の排出係数の特定と、報告企業が調達した証書などによる温室効果ガス排出量の調整(オフセットクレジット)という2つの観点から解説します。

STEP1 マーケット基準対応の排出量を用いて、排出量を算定

実際に購入している電気事業者の電気マーケット基準対応の排出係数を特定し、各電気の排出量を算定します。

下図に示しているように、マーケット基準の排出係数は各電力供給事業者ごと数値が異なります。また、契約しているメニュープランによっても異なるため、慎重に確認しなければなりません。

購入している電気事業者と各メニューの確認は以下のサイトでご確認できます。
電気事業者別排出係数(特定排出者の温室効果ガス排出量算定用) -平成30年度実績- R2.1.7

画像:ロケーション基準・マーケット基準の排出係数のイメージ図


出典:サプライチェーン排出量 算定・活用セミナー(CDP)

(例)使用電力に伴う排出量

  •  A 電力:100 MWh*0.25 t‐ CO2/ MWh = 25t‐ CO2 
  •  B 電力:300 MWh*0.40 t‐ CO2/ MWh = 120t‐ CO2
  •  C 電力:500 MWh*0.30 t‐ CO2/ MWh = 150t‐ CO2

STEP2 排出量の調整に使用する証明書の決定

Scope2ガイダンスでは、オフセットクレジットと再エネ証書を区別しており、再エネ証書による調整は認められていますが、オフセットクレジットの利用は認められていません。

報告する企業が自らの排出量調整に使用できる証書等は、再エネ由来J-クレジット、グリーン電力証書です。

ここで注意しなければならないのは、温対法に基づく温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における調整では、J-クレジット(省エネ由来、森林由来)、グリーンエネルギ ーCO2 削減相当量が利用可能ですが、現在算定しているScope2ガイダンスでは利用できないということです。

(例)保有している証書

  • 再エネ由来J-クレジット:(50t‐ CO2)100 MWh
  • グリーン電力証書:(150t‐ CO2)300 MWh

出典:国際的な気候変動イニシアティブへの対応に関する ガイダンス(経済産業省・環境省)

STEP3 証書等使用後の排出量算定

STEP1で算定した排出量に対して、STEP2の証書等を使用し算定します。

証書等を使用する際に注意しなければならないのが、電力量単位(kWh、MWh)で調整することが求められているため、どの電気に対し証書等を対応させるのか決めなければなりません。

(ⅰ)使用電力に伴う排出量
電気使用量 900 MWh 証書使用前の排出量 295 t‐ CO2

  • A 電力:100 MWh*0.25 t‐ CO2/ MWh = 25t‐ CO2 
  • B 電力:300 MWh*0.40 t‐ CO2/ MWh = 120t‐ CO2
  • C 電力:500 MWh*0.30 t‐ CO2/ MWh = 150t‐ CO2

(ⅱ)保有している証書
400 MWh分の証書等を保有

  • 再エネ由来J-クレジット:(50t‐ CO2)100 MWh
  • グリーン電力証書:(150t‐ CO2)300 MWh

(ⅲ)証書使用後の排出量(t‐ CO2)
(ⅱ)から400 MWh分の証書等を保有しており、任意で400 MWh分の排出量を相殺することができます。

B 電力の300 MWhに対して100 MWh分の証書を使用し、C 電力の500 MWhに対して300 MWh分の証書を使用した場合以下となります。

証書使用後の排出量は165(t‐ CO2)

  • A 電力:100 MWh*0.25 t‐ CO2/ MWh = 25t‐ CO2 
  • B 電力:200 MWh*0.40 t‐ CO2/ MWh = 80t‐ CO2
  • C 電力:200 MWh*0.30 t‐ CO2/ MWh = 60t‐ CO2

以上3つのSTEPによって、マーケット基準手法に基づき報告する排出量算定の結果は、165(t‐ CO2)となります。

ロケーション基準とマーケット基準に関する詳しい情報を確認したい場合は以下のサイトを確認してください。
国際的な気候変動イニシアティブへの対応に関する ガイダンス

また、こちらのサイトではロケーション基準とマーケット基準に関する情報が分かりやすく体系的に捉えることができます。
日本における再エネ調達と スコープ2算定

まとめ

今回は、「ロケーション基準手法」と「マーケット基準手法」それぞれの特徴や注意点、そして具体的な算定手順をご紹介しました。
「CDP気候変動質問書2016」における米アップル社のScope2排出量は、「ロケーション基準手法」では約38万t‐ CO2でしたが、「マーケット基準手法」で算出すると約1/9の約4t‐ CO2でした。

この事例から捉えられるように、「マーケット基準手法」は平均係数を用いる「ロケーション基準手法」より粒度の細かい情報を報告することができるので、サプライチェーン排出量削減に力を入れている企業の成果が一層、反映されやすい手法であるといえます。
ですので、Scope2を算定する手法を決定するときは、出来る限り「マーケット基準手法」を採用し自社の企業努力を開示することをお勧め致します。

「CDP気候変動質問書2016」における米アップル社のScope2排出量に関する情報
[連載]グローバル企業の温暖化対策 第1回:米アップル

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